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空想作家と専属イラストレーター&猫7匹の                 愛妻家の食卓

空想作家と専属イラストレーター&猫7匹の     愛妻家の食卓

山猫のかるら ・ (~命のお話し~)

山猫のかるら ・ (~命のお話し~)


ボクは山猫のかるら。今日は母さんと狩りの練習・・・母さんが見守るなか1匹の野ネズミを狙っていた。

〔ほら、目を離さないで。しっぽをそんなに振らない。もっと低く伏せて・・・今よ!〕

「えいっ!・・・やったー!」

〔だいぶ上手になったわね〕

「へへぇ、もういちにんまえ?」

〔何言ってるの、まだまだおぼえなきゃならないことは沢山あるわよ〕

「たくさん?」

〔そうよ、今日は命のことを学びましょう〕

「いのちぐらい知ってるもん!」

〔まぁ、聞いてちょうだい。今、捕まえたネズミはかるらの手の中でどうなった?〕

「あばれていたけど、もう死んじゃったよ」

〔そうね。まだ温かい?〕

「うん・・・でも、少しづつ冷たくなってきた・・・」

〔そう、それが命の温かさよ。そして、その冷たさが死よ。そのネズミは私たちにはとても大切な食料だけど、かるらに捕まるまでは私達と同じ命があったのよ〕

「ボクたちと同じいのち?」

〔そうよ、生きている全てのものには命があるの。足元を歩く小さな虫だって、そこのキレイな花にだって私たちと同じ命があるのよ。私たちはその命をもらって生きている。そうしないと生きていけないでしょ?だから、何かを食べる時にはもらった命に感謝しなくちゃいけないの。命をいただきますってね〕

「うん・・・」

〔それじゃあ、いただきましょ〕

「いただきます!」

ボクはネズミを食べながら命のことを考えていた。そして、1つの疑問が浮かび上がった。

〔ごちそうさま〕

「・・・ごちそうさま・・・」

〔あら?元気がないわね〕

「母さん、ネズミはボクたちのために生まれてきたの?」

〔私たちに食べられるから?〕

「うん・・・」

〔そんなことはないわ、全てのネズミを食べてしまうわけじゃないもの、私たち山猫にくらべたらとっても数が多いのよ〕

「・・・でも、食べられてしまうネズミはボクたちのため?」

〔いえ、違うわ〕

「じゃあ、食べられるネズミはなんのために生まれてきたの?」

〔そうね・・・他のネズミを助けるためか・・・他のネズミにここは危険だと教えるためか・・・はっきりしたことは分からないけど私たちのためじゃなく、ネズミはネズミたちのために生まれて死んだのよ、もちろん私たちもそのおかげで生きていけるんだけどね。どんなに生きた時間が短くても生きた意味と死ぬ意味はあるものよ〕

「ボクたちは死なない?」

〔死なない生き物なんていないわ。死は生まれた時から決まっているの〕

「やだなぁ・・・怖いな・・・」

〔そうね。でも、母さんは自分の死は怖くないわよ・・・かるらの命のほうが大事。かるらの死のほうが怖いわ・・・〕

「・・・ボクも・・・母さんが死んじゃあいやだ!」

〔ありがとう。でも、かるらは母さんより生きなくちゃいけないの、命をつなげていかなくちゃいけないのよ〕

「いのちをつなげる?」

〔そうよ。かるらも父さんのようにりっぱになって子供をもつの、それが命をつなげるってこと、そうして命をつなげていかなきゃいけないのよ〕

「そうすればボクたちの命はえいえんだね」

〔永遠?そうね、そういうことになるわね・・・さぁ、暗くなるわ、帰りましょう〕

「うん!」

それからしばらくたってボクは1きりで狩りをすることになった。ボクは嬉しくてついつい遠くまで来てしまっていた・・・

「あれっ?ここはどこだろう・・・」

辺りを見渡すとまったく見覚えのない場所だった。そして、そこには他の木とくらべものにならないくらい大きな、大きな木が立っていた。

「すごーい!なんて大きな木なんだ・・・」

すると、さらに驚くことがおこった。

〈おや、山猫の子かい?〉

「わっ!木がしゃべった!」

〈なんじゃ、木が話をしたらおかしいかい?〉

「だって・・・こんなこと今までなかったもの・・・」

〈わっはっはっ、確かにわしは特別じゃからのう。しかし、お前さんたちが聞こえんだけで他の木や草花も互いに話しておる。何事も思い込みや見た目で判断するでないぞ〉

「はい・・・」

〈わしはこの山で1番長老のボックルじゃ、お前さんは?〉

「ボクは山猫のかるらです。狩りの練習に夢中になっていたらまよってしまって・・・」

〈迷子というわけか・・・それならわしが風に頼んでさがしてあげよう〉

「えっ?風に?」

〈そうじゃ、わしは風とも話ができる・・・・・・〉

「すごいんだね」

〈・・・よし、風に頼んでかるらの母さんを探しに行ってもらった。すぐに分かるだろうから少しわしにもたれて休みなさい〉

「はい、ありがとうございます」

ボックルのおじいさんにもたれると、歩き疲れたのとあまりの居心地のよさにすっかり眠ってしまった・・・
 眠っている間、ボクは不思議な夢を見た。まずボクは空高く、1粒の雨になっておじいさんに降り注いだ。そして、おじいさんの根を通り、幹を通り、枝を通っていつのまにかボクは木の実になっていた。そして、ボクは木の実として地に落ち、山を転がり野ネズミに拾われた。すると、今度は野ネズミになって山を走り回り、ボクは山猫であるボクに捕まってしまった・・・

「わっ!」

ボクは目をさました。

〈どうしたんじゃ?怖い夢でも見たかい?〉

「はい・・・よかったボクのままで・・・」

ボクはおじいさんに夢の話を聞いてもらった。

〈そうか、かるらは命のつながりをみたんじゃな〉

「いのちのつながり?この前、母さんにボクたちのいのちのつながりを教えてもらったけど・・・おじいさんやネズミたちともつなっがっているってこと?」

〈そうじゃ、生きている全ての命はつながっているんじゃ〉

「ネズミの命をもらっているからネズミとはわかるような気がするけど・・・ボクたちとおじいさんとはわからないな・・・」

〈そうじゃな、いっけん関係ないように思えるが、ちゃんとつながっているんじゃ。山猫は確かにこの山で1番強いかもしれないが、死んでからはどうなると思う?その時は逆に野ネズミたちの食料になり、やがて土になる。わしはその土から栄養をもらって生きている。そして、わしは実をつけネズミや小さな動物たちにに与えている。それがつながりじゃ、そうやって知らず知らず助け合い生きているんじゃ〉

「そうか、ということは誰がいなくなってもいけないってことだね。みんなで一緒に生きているんだね」

〈そういうことじゃ、そのバランスが大切なんじゃ〉

「はい!」

そうして、おじいさんと話していると、やさしくてやわらかな風がボクの横を通りすぎた。

〈おや、風が帰って来たぞ。どうやら居場所が分かったようじゃ〉

「良かった・・・ありがとう風さん!」

〈母さんが心配してるようじゃ、早くお帰り〉

「はい!それじゃあどっちに向かえばいいんですか?」

〈風が背を押してくれるから大丈夫。ほらっ!〉

おじいさんがそう言うと本当に風が強くボクを押した。

「おじいさんありがとう!またね!」

〈あぁ、またおいで〉

                              おわり。



親子で読んでください。また、読み聞かせにどうぞ(^-^)/


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